NAVERまとめに見るインセンティブのあり方

  • 23 December 2012
  • のぶやん

NAVERまとめでは、「100万円も夢じゃない」ようなお話をニュースのサイトなどでしていますが、ニュースのネタとしては悪くないのですが、実際にNAVERまとめで100万円を稼ぎ出そうとする人はそれほど多くないでしょう。どうしてかと言えば、多くの人はNAVERまとめで10万円も稼げれば十分に満足する訳で、それで生活する事を考えても、普通の人ならNAVERまとめだけで20万円も稼げたら嬉しくて仕方ないでしょう。

東証


ソ連の社会主義経済の失敗

ソ連が崩壊した原因のひとつ(参照サイト)もあると言われるのですが、ソ連においても「スタハノフ運動」のように「模範労働者」を立てる事でやる気を起こさせようとする機運がありました。しかし、最初のうちは良いのですが、多くの人がやる気を出すのは最初だけで、後になってくると多くの一般労働者が「どうでもいいや」とやる気をうしなって、逆に生産性が落ちてしまうというような事が発生します。NAVERまとめでは、実にその事が良く再現されていました。

例えば、ルーキーやレギュラーに選ばれたら報酬が2倍だ、3倍だになるにしましょう。そうすると、ルーキーやレギュラーに選ばれようと最初は多くの人が頑張るとします。そこで、ルーキーやレギュラーに選ばれなかった人がいたとすれば、ルーキーレギュラーに選ばれた人が30万円稼いでる時に、自分は凄く頑張って1万円行かないかもしれない。格差は30倍もあれば、やる気をなくすのに十分な動機になるでしょう。PVを集める事は大事だったけど、それ以上に一般ユーザーに対してそこそこの満足度をあげる事が重要になります。

外資系企業の給与体系

外資系企業の友達が多いのですが、外資系企業の給与体系は極端に幅を持たせている事が多いです。調子の良い時には1ヶ月に数百万円稼げるかと思えば、調子が悪くなれば20万円しか稼げないような事もあるといった具合です。そういうやり方をしていると、自然にここで駄目だと思うと辞めていくので、離職率が高くなります。そういう会社の社長が決まって言う言葉は「うちには良い人材が常に不足している」です。会社全体の業績が悪い時には皆やめるおかげで、成績が良かった人も誰も残ってないのです。

報酬を多くあげれば、人は良い顧客対応をして、人は良いまとめを作るかというのも疑問なのです。例えば、良い営業マンというのは、稼ぐのが上手なのであって、顧客に対して親切かは別の問題です。そして、稼ぐのが上手な営業マンが長期的に見ると顧客の信頼を失って、稼ぐのが下手で成績は悪いけど親切な営業マンが会社に貢献しているという事も良くある話(資生堂は営業のノルマをやめた理由)です。長期的に会社に貢献する人を無視して、稼ぐ人ばかり作り出そうとすれば、顧客を騙して金を取ってくる社員が増えて、会社全体が信頼を失うのです。

働く意欲を失ったニート

外資系企業の話ならば、労働者として働いているのでマシな話なのですけど、労働意欲を失った形としてはニートがあげられます。潜在的に労働市場に投入すれば働けるはずの若者がゲームばかりをして家にいたりする事があるのです。特にニートの問題は、階級社会が残るイギリスで深刻化しており、不平等が是正されない中でやる気がでない若者がイギリスに沢山います。

日本では、年功序列の影響で高齢者が高い賃金を貰うようなシステムが残っており、そうしたシステムが若者に対する賃金抑制につながっていると指摘する人もいます。コンビニなどでアルバイトした所で、時給が1000円ほどでやる気が出ないという事も十分に理解できる話です。国であったり、会社などが、インセンティブに関してお金の面だけでなくて、生活・住居面を若者にサポートしていく事が重要になると考えます。

コンテンツと報酬の難しさ

コンテンツと報酬を考えているのはNAVERまとめばかりではないでしょう。例えば、Nanapiにしても、300-500円で記事を書いて貰っても、全くヒットしないでゴミみたいなコンテンツばかりになれば、赤字になってしまいます。基本的には、爆発的にヒットしたコンテンツから得られる報酬が大きくて、このゴミコンテンツの生産を補っていると考える事ができます。しかし、どれがゴミで、どれがヒットするかは、あらかじめ分かっている事はありません。これが市場原理のミソの部分です。

あらかじめ「ヒットするコンテンツ」というのが分かっているとすれば、それを量産していけば良いという事になります。しかし、量産したところで実際にPVに結びつかない場合もあるのがネットの難しいところです。Nanapiでも、ヒットしているコンテンツというのはほんの一部で、そのコンテンツが全体のPV数を牽引しています。インターネットでは特にその傾向が強いですけど、ヒットするコンテンツは分からないので、自由に量産した方がヒットの可能性が見込めるという場合もあるという事になります。

ヒットする可能性のある「ある程度の質のもの」を大量に作り出していくという作業が求められますが、この作業が出来る人というのが少なくて、それが出来る能力高い人は、果たしてコンテンツ作りに参加してくれるのかという事になっていきます。

人の需要がバラバラ

PV数に限らず、「良いまとめ、良いコンテンツ」が重要になってくるのは、人の需要というものが多種多様になっているからとも考えれます。例えば、私から見るとNanapiのコンテンツの80%は見るに耐えないコンテンツなんですけど(失礼!)、そういったコンテンツも共有されたりしています。短期的に見ると面白いと思われるコンテンツは共有されるのですが、長期的に見ていくとユーザーの信頼を失って、ユーザー離れを起こす可能性があるのです。

コンテンツの量産を行う事で、確かにPV数を取ってある程度の金になるという事はあるでしょうけど、それは数年間の話です。Mixiのコミュニティに参加者が増えていく過程で投稿の中身が大幅な質の低下を招いたように、コンテンツの量だけで勝負するのは限界があります。「NAVERまとめ」が長期的な事業を目指すのであれば、長期的なまとめをもっと重宝していくべきでしょう。そうしないと、良質まとめというものは生まれてこないからです。ただ、そうなるとNAVERのサービスよりは、むしろNHN社内の社員のガバナンスの問題になってきます。

ただし、会社として事業をやっていく為には、短期的に評価されるシステムというのは仕方ないものでもあります。短期的に事業を軌道に乗せていかないとお金にならないというのもまた事実で、のんびりゆったりと構えている訳にはいかないでしょう。特にNAVERまとめもNanapiも開始から既に3年を経て収益化が重要になっています。そのバランスというのが非常に重要になってきます。
 

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