液晶

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腐ったシャープを買ってくれる企業があるなんて素敵な事じゃないか。

  • 8 March 2016
  • のぶやん

2007年に『亀山モデル』が売れまくったとして、過去最高の1000億円の利益を計上したシャープですが、それから10年もしないうちに経営危機となり、破綻も間近と言われるまでになりました。シャープは、液晶事業への巨額投資が裏目に出たとされていて、液晶価格が暴落する中において、利益が出せない構造になっていきます。

2016年3月末には、5100億円の借金の借り換えも迫っていて、シャープが取りうる選択肢などほとんど残されてはいませんでした。救世主として現れたのは、現預金を2兆円以上保有するとされる台湾のホンハイです。産業革新機構(官民機構)の3000億円では、とてもシャープを救いきれないという事が明らかでした。



ホンハイがシャープに関わっているのは、大阪の境工場が始まりです。世界最大級の液晶ディスプレー工場とされていますが、過剰投資によってシャープを破壊した元凶とも言われています。台湾のホンハイは、売上16兆円という世界最大の電子機器の製造受託メーカーです。下請けとしてずっと電子機器の取引を行ってきて拡大してきました。アップルの製品を組み立てている事で有名で、そのほかにも様々な業者の電子機器を取り扱っています。

従来のホンハイは、とにかく製造受託に集中して事業を展開してきており、それで郭会長も1代で莫大な利益を手にしました。更に利益率を上げる為には、自社ブランドを高い技術で実現する必要があるとして、シャープを買収するという事になったという事です。また、鴻海はシャープと比較にならないほど世界に取引先を持っているので、大きな販路を確保する事ができます。

40代以上はほとんどリストラ対象

ホンハイがシャープを買収した場合には、40代以上の社員はリストラされて、『日本式の古い経営スタイル』が一掃される可能性があるでしょう。シャープの神髄は液晶ディスプレーにあり、その技術者以外は、特に必要のない人は大幅にリストラ対象になるでしょう。受託というのは利益率が低いので、それだけ『効率化された経営』が行われています。その効率化された経営にシャープを当てはめていく事になる事は確実です。

今の時代は、デジタルで動く時代なので、素早い意思決定が必要であり、それについてこれないような『40代以上の腐った社員』というものは、ほとんど必要ないという事になるでしょう。日本企業は、意思決定までの時間がかかったり、意思決定の方向が間違っていたりする事が多いです。

グローバルに優秀な経営者が必要

台湾のホンハイの郭会長は、1代でホンハイを巨大企業に築き上げた実績があります。彼の手腕をシャープに適用してシャープを再建させる事は、シャープ自体にとっても良い事です。もっとも、ホンハイの郭会長以外にシャープを欲しいという企業はありませんでした。それは当然で、これだけ巨額の金額を出せる企業はほかにないですし、これだけ大型の負債を抱えるシャープを買っても立て直せなければ、自社が倒産する危機すらあるからです。シャープの技術力は、1兆円の負債に見合ったものではありません。それを覚悟で郭会長はシャープを購入しようというのです。

郭会長は、2兆円もの巨額資金の投資先に困っているように見えます。自社は既に受託生産できるところからほとんど受託生産しており、売上高を伸ばすには、自分のブランドを持っていく必要性に迫られます。短期間で自分のブランドを世界に浸透させるには、日本企業のようにブランド力があったり、技術力がある企業を、少しぐらい高くても買い上げるというのが良いと考えたのでしょう。

ジャパンディスプレーの勘違い

ジャパン・ディスプレーは、『東芝・ソニー・日立』の3社の液晶部門に産業革新機構が出資して『ジャパンディスプレー』などとしていますけど、実際には3社ともに液晶部門がボロボロだから統合したわけで、統合したからと言って国際競争力があるとは限りません。現在、ボロボロであるジャパン・ディスプレーがボロボロのシャープを加えたところで、世界で対抗できるはずもありません。シャープ再建どころか、ボロ船に一緒に乗って沈む事は目に見えていました。産業革新機構は、シャープを救う事など最初から出来ない事は、誰の目にも明らかだったのです。

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液晶価格の大幅下落でシャープ再起は不可能?液晶技術に集中しすぎたシャープの末路

  • 13 January 2016
  • のぶやん

液晶ディスプレイの価格は、ずっと下落を続けていますが、今ではパソコン用のディスプレイで多い23.5インチが17000円、27インチで21000円で売られるようになってきています。43インチという壁掛けの液晶型であったとしても、6万円あれば購入できてしまいます。液晶がコモディティ化したと言われてから久しいですが、工場による大量生産が確立した事によって、液晶の価格競争が激しくなって、普通に作って普通に売っていたのでは、全く利益がでない状況になってしまいました。

パソコンディスプレイは、1-3万円で購入可能

利益が出ないけど売るしかない状況

シャープの液晶についても、他社との競争の中で価格を大幅に下げないと売れない状況で、価格を限界まで下げています。価格を限界まで下げていくと、今度は利益がほとんど出ない状況になってしまいます。まるで、工場を稼働させる為に液晶を生産しているような状況に陥っています。その実態としては、売れば売るほど赤字になるという事でしょう。しかしながら、液晶を売らないと「会社としてはやる事がない」という状況に陥ってしまうので、赤字になっても向上を稼働させながら次の事業を探さなくてはいけないという非常に厳しい状況になっています。

原因となっているのは、液晶ディスプレイを作る技術が世界的に確立して、日本企業じゃなければ作れないという状況がなくなったからです。中国などには工場が乱立しており、液晶ディスプレーというのは、「品質を問わなければ工場さえ建てればどの会社でも作れる」という状況になってきました。更に激しい競争の中において、品質の向上も見られるようになってきており、「そこそこの物が安い価格」で作れるようになってきています。液晶の価格は、こうした中でますます下落を見せています。

技術以外に売れるものが何もない

シャープの場合には、既にかなりの規模でリストラを行っており、本社もニトリなどに118億円で売却しているので、既にシャープには「売るものがほとんどない状況」となっています。シャープが存続しているのは、その技術にある程度の価値があるからであり、その技術に依存して存続しているようなものでしょう。もちろん、技術というものが重要なものである事は間違いないのですが、技術というものも時間が経てば陳腐化していきます。

シャープの時価総額というのは、2016年1月に東証が明けた時点で2000億円弱あるわけですけど、ほとんど倒産しかけた会社としては高すぎる時価総額と指摘する人もいます。現在のシャープの技術がどの程度であるか図りかねますが、時間を経るごとにその技術が陳腐化している事は確かでしょう。

労働者が高い賃金を得られない

液晶が大衆のコモディティ化する中で、液晶を作っていたのでは労働者が高い賃金を得る事が難しい状況になってきています。日本では、中国の安い労働力などに対抗するために「派遣労働者員」を増やしてきましたが、この派遣労働者の条件が悪いと、今度はすぐに辞めたり、派遣労働者が集まりづらいという状況すら起こるようになってきています。更に言えば、派遣労働者の賃金というのをこれ以上下げる事は不可能であり、液晶価格が大幅に下落すると、経営努力を行ってもどうしようもない状況に陥っています。

シャープのように主力としていた事業においてグローバルの価格競争に巻き込まれると、派遣社員だけではなくて、正社員をリストラしたり、正社員の給与を維持する事も難しくなってきます。コストを削減できそうなところを全て削減しても会社を生き残らせないといけないという状況になるからです。こういった価格が下落するものを主力商品としている会社にすると、自分たちが価格を主導するほどに価格を落としていかないと厳しい状況にさらされています。とにかく「価格が安くないと売れない」という状況なので、他社より価格を下げるのを自分たちから行わないといけないのです。

新しいビジネスモデルが得られない

シャープは、液晶に集中するとして、大型工場などを作りましたが、それは最近のビジネスモデルとしては外れていました。国内において、そのような大規模工場を自社で抱える事は、相当にリスクが高すぎて、儲けるビジネスではなくなっていたのです。儲けている会社を見ると、アップルのように製品を発注する側に立って、市場を支配するマーケティング企業であり、シャープは製造業を強化する前の段階として、自社ブランドを活用したマーケティングを強化すべきだったのです。

もちろん、シャープが製造業としてアップルにはない独自の技術を強みとしていた所は理解できます。しかし、その技術というものでは、大量に出てくる安価の液晶に対抗しるほどの市場を形成できなかったという事です。いかに技術力が高くても、それを求めるユーザーが少なかったり、製品が高すぎては買ってくれる人がいないのです。国内に大規模工場を建設して価格を下げる事で、技術×大規模で低価格という勝負を挑んだ訳ですけど、「低価格」というものがシャープの予想を更に下回るような低価格になってしまって、結局のところシャープの大規模工場で勝負できなくなりました。

自社ブランドに依存しすぎた

亀山ブランドと呼ばれてシャープの亀山工場で生産されたものが非常に品質が良いと評判になったという事になっていて、実際に「液晶のシャープ」と言われるほど、シャープの液晶が優れていた事は、誰もが認める事でした。しかしながら、価格が高ければいくら優れた技術であったとしても、大衆が手が届く事はないという事がシャープの例で実証されました。例えば、ホテルなどで大量に液晶テレビを仕入れる時には、最も良い部屋にシャープ製の液晶を入れるとしても、全ての部屋でシャープ製の液晶を使う必要はどこにもないのです。顧客は、サムソン製であったとしても、テレビが綺麗に写ればそれで満足で、そこにコストをかける必要はないのです。

パナソニックが巨額の赤字から立ち直れたのは、パナソニックが「幅広い分野において基礎的な技術力が高い」という事にあります。例えば、パナソニックのデジカメなどは、「動画が最も綺麗に撮れる」という事で評判で、コンパクトデジカメでも他社のものよりも動画が綺麗に写ります。単なるカメラとして見た場合には、ニコン・キャノンに負けるのですが、動画を撮影できるカメラとして見た場合には、ダントツでパナソニックなのです。このように様々な分野で、パナソニックが「絶対に必要とされる事情」があるので、パナソニックが復活する事が出来たのでしょう。


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