グローバル化とIT化の中でサラリーマンが搾取されてどんどん貧しくなる構図

  • 2 November 2016
  • のぶやん

労働単位というのは、サラリーマン1人が『個人』として働くのが最小の労働単位となっています。これが大きくなって複数人になってくると、『法人』となって、数人から大きいものでは数十万人の規模まで膨れ上がります。

生産の最小単位としての個人

個人は生産の最小単位となるので、個人が削れる費用と言うのは限界があります。人間の場合には、衣・食・住のうちで、最も重要になるのが『食』であり、『住』であり、現代社会において着るものを調達できないという事はほとんどありません。食べるものが容易に手に入らなかったり、食べ物に事欠くようになってくると、『貧困』と定義されて、現在の日本でもかなりの数の貧困、特に1人親世帯の貧困率が50%を超えているとされています。

この衣・食・住のうちで最もコストが高いのが住居であり、格差社会になればなるほど、居住区によって階層が分かれるような状況が発生してきます。生活費の中で大きなウェイトを占める住居費用を先に削るからです。住居費を削った後には、ほとんど生活費で削れるところがなくなるので、遊びに行く回数を減らすなどして、それでもダメな場合は、食費を削るようになります。食生活を見ると、どの程度の水準の生活を過ごしているかすぐに見えてきます。

グローバル化で移動

日本の労働者の賃金は、中国に比べて3倍~10倍とされています。日本企業は、業績が悪化すると人件費を削ろうとしますが、削れる人件費には限界があります。個人の所得下限というのは決まっていますので、個人の所得を限界まで落として、それ以上は減らすことができません。つまり、グローバル企業は、ある国家の賃金が高くなると、別の国家に労働力を求めて移動していきます。日本の場合にも、中国に労働力がどんどん移動して、中国の工場で物を安く生産して、日本で販売するスタイルが1990年代から2000年代に定着しました。

通常であれば、企業の業績が悪化してくると(1)最初に給与削減を行って費用削減で強引に黒字を出すまで持ち込み(2)給与削減が限界に達するとリストラを行うという状態になっています。しかしながら、人員を削減しすぎると企業が回らなくなってしまうので、企業としてギリギリのところまで社員を削減してみます。そういった現場の状況としては、『安い給料で酷使されている』という感覚に陥ってしまう訳です。辞められる人から辞めていくので、後に残っている人は『使えそうもない社員』という事になります。

物価が上がるのに給料が下がる

アメリカでは、物価が上昇したにも関わらず、労働者の給与が減少するという事が起こりました。この要因としては、アメリカで人口が増えてインフレが起こったにも関わらず、中国などに工場が移動して『海外から富を得られる豊かな人』と『海外から富を得られない貧しい人』がはっきりと分かれてしまったからだと考えられます。アメリカ企業は、海外からの収益で潤っているので、海外からの収益がないとすでにやっていけないような状況になっています。海外からの富を得られる人は、地球全体から富を得て潤うのに対して、そうでない人は国内で小さな消費の中で働くしかない状況になっています。

最近では、中国、アメリカなどで見られる傾向として、学歴などがあったとしても、就職できなかったり、失業したりすると稼ぐ技術が得られずに中高年を迎えるという例も増えています。そうなると、結婚が難しいどころか、自分の生活さえ支えるのが難しい状況に陥るという人が少なくありません。

失業者を受け入れる場所がない

現代の高度化した社会においては、失業者を受け入れる場所を見つける事が非常に困難です。特に技能を持っておらず、稼いでくれない中高年のおっさんを雇用したがる企業というのは、どこにもありません。特に中小企業をリストラされた中高年のオッサンを雇い入れてくれるところは滅多になく、失業が長期化する可能性が非常に高いと言えるでしょう。

技術を磨いていくには、一生懸命に自分で努力を重ねていって、数年単位の時間がかかります。ニート期間が長かったり、スキルを磨く余裕がない期間が長かったりすると、大したスキルもないままに所得が非常に低いままに中高年になってしまうので、そうなると『お金を稼ぐ方法』というのが非常に難しい状況になると言えるでしょう。

例えば、誰でもできるWordpressでブログを立ち上げるという作業ですが、ブログに広告を掲載して稼ぐというのは、非常に難しくなってきています。10年前であればブログに広告を貼り付けて『そこそこ稼ぐ』という事も可能だったのですが、今ではスマートフォンが台頭した事もあって、記事を書いて広告を適当に貼り付けただけでは、利益が出づらくなってきています。最低限の生活をするのに10万円が必要だとして、その10万円稼ぐのすら1つのブログ程度では、『ほとんど不可能』という状況になってきています。スタートアップ企業では、経営者が資金調達してきて、技術者と一緒にやるという例もありますが、基本的には経営者が技術もできないとお話にならない例も増えています。

表面上『それらしく作る』だけでは、マネタイズできなくなってきているのです。例えば、中国で格安で1万円以下のスマートフォンが作られていて、それは日本で人件費などの問題で対抗する事が出来ません。日本企業は、スマートフォンの高度な部品屋になってしまって、スマートフォン自体を生産するところから撤退してしまっています。単純に出来る作業は、中国の会社に取られてしまっているからです。それと同じ事は個人でも起こる事で、個人でも中国人が出来る事であれば、中国の方が安価に出来てしまいます。グローバル化によって、国境に関係なく、優秀か、そうでないかで評価される時代になりました。日本人にとっては、今までの給料が保障されなくなる事を意味しています。

1人に要求される能力が高まる

サイバーエージェントでは『自走』と呼んでいるそうですけど、会社において他の人に頼らずに1人でどんどん進めていく能力を要求されます。従来の作業というのは、『単に言われた事だけをやっていれば給料が貰える』という工場の労働者のようなものでしたが、今の会社で求められているのは、よりクリエイティブで自分からどんどん問題解決をして進めていける能力が求められています。個人が積極的に組織に関与して、そういった働き方をしていかないと組織として弱体化していくからです。日本では、残念ながら年功序列の社会の中で、そうしたクリエイティブな作業をする事が困難になっています。それは、グローバルでソフト分野において大きく負けている事を意味しています。

こうした高度でクリエイティブな作業が行える人には、それなりの高い報酬が支払われるはずだと思うのですが、実際にはそうでもないのです。こうしたクリエイティブな作業をしても、従来の工場労働者と同じぐらいの賃金しか貰えないのが今の社会です。そして、もし単純作業しかできない、やりたくないという事であれば、今までのサラリーマンの半分以下しか給料が貰えないという事でもあります。言われた事しかやらないレベルのサラリーマンの報酬というのは、グローバル化の中で非常に低いものになってしまいます。

何故、言われた事しかできないとダメかと言えば、デジカメなどが発達して、プロでなくても動画が撮影できる時代になり、ソフトウェアが発達して、大学生でも動画編集できる時代になったからです。このように『プロでなくてもできること』が増えた中で、プロとしての価値というものが求められるようになってきているのです。誰でも出来るような作業がロボットに任されたり、安いアルバイトに任される中で、企業の中に置いては、他の人ができない能力というものを求められるようになってきています。そのようになる為には、大学で学んだだけではなくて、社会の実用的なマネタイズ手法を学ばなくてはならず、その能力開発には5~10年の時間を要する事でもあります。お金を持っているほど、時間を短縮できるので有利になり、逆に貧乏人はいつまでも貧乏人を脱却できない可能性が出てくる要因です。

はっきり言って、組織の中でそれだけの事を求められるのであれば、優秀な人であれば、独立して事業を営んだ方が良いでしょう。優秀な人になればなるほど、かなりの満足できる高額報酬を貰わない限りは、人の下で組織で働きたいと思う人はほとんどいないはずです。優秀さで言えば、能力を身に着けた若い人が現実的に勉強して能力値を高めている事も多いですが、中高年の方が年功序列で賃金が高い歪んだ日本のシステムは、就職氷河期に就職できなかった大量の中高年を生み出して問題になってきています。

新聞社の記者などを見ていれば分かりますが、従来の取材をして記事に仕上げるという非常に古典的な作業しか行う事ができないにも関わらず、何故だか給与だけが高くなっています。こうった新聞社の異常な状況と言うのは、世界中どこを見ても日本だけであり、この状況が近いうちに崩れていく事は明らかです。そうすると、今まで新聞記者をやってきた人などは、特に特別な技術を持ち合わせている訳でもないので、一気に給料が半額以下に落ち込むわけです。

雇用主の為に労働するのが労働者

基本的に古来よりお金を支払う顧客の為と言いながら、雇用主の為に仕事をするのが労働者です。この点においては、正社員であろうとなかろうと、非正規雇用であろうと、アルバイトであろうと変わりません。ドイツが強制収容所における労働者の階級としては、ドイツ兵の下に労働者を管理する『カポ』という役職が設置されて、労働者の管理に当たっています。今でいうと、アルバイトの上にアルバイトを立てるようなもので、カポと呼ばれる人が囚人に対してこん棒などで暴力を振るう事もあったとされています。

現代の労働者も、アルバイトなどで10万円ぐらいの給料であれば、『限りなく自由が制限される中で、限りなく報酬が低い』と言えるので、ある意味で強制収容にかなり近いと言えるでしょう。更に若い女性の場合には、多くの貧困女性がAVに出演したり、風俗で働いていたりする状況にあります。日本の『見えない貧困』は加速していて、それが社会に出ないのは、アメリカと同じように豊かな国というイメージに支配されているだけではなくて、労働者自身が自分らの置かれている立場を良く分かっていないという事もあるでしょう。

ローマ時代の大土地所有制度

都市部に居たローマ市民は、占領地を広げながら、日頃は占領地から来た奴隷を働かせて自分たちが食べていました。ローマ市民(当時は農民)は、占領地を広げる為に徴兵に応じており、豊かなローマ市民が徴兵で占領地を増やすような働きをしていました。しかし、農地が巨大化するにしたがって、中小の農民が没落して、豊かではない農民まで徴兵に取られる事になり、ローマ市民軍の質も低下していきます。

戦争の徴兵(労働税とも考えられる)などが長期化する中で、中小の農民が妻子に農地を任せきりのような状況になり、その事が農地の荒廃を招いて、兵士が農地に戻れずに都市の無産市民になる例が多発しました。日本では、小作農で貧しい農家が多い事が戦争の引き金にもなったとして、戦後に『農地改革』で小作農を自作農にしていく流れがありました。しかし、小規模農家は耕作放棄して都市に流入してくる事も多くなっています。

地中海世界を支配したローマ帝国は、広大な属州を従えていた。それらの属州から搾取した莫大な富はローマに集積し、ローマ市民は労働から解放されていた。
パントサーカス -wikipadia

ポエニ戦争で疲弊していた中小農民の没落に拍車をかけた。奴隷無しの家族経営、あるいは1人か2人の奴隷を使っての自作農は、安価な奴隷を大量に使役するラティフンディウムに対して、経営コスト的に太刀打ちができなくなった。彼らの多くは土地を失い、無産市民としてローマに流入し、大きな社会問題となった。
ラティフンディウム-wikipadia

貴族に大規模化によって『安価に生産が行われる』ようになった一方で、無産市民がローマ市内に増加したという事です。次第にローマが奴隷を安価で使う労働力を失って、没落農民を労働力にしていく事になります。日本でも、戦後に農家などが農地を捨てて都市に出てきて無産市民として働く例が多く見られました。この没落農民というのは、ローマ市民と同じで自由人として労働を担っていました。アメリカにおいても、奴隷が高価になってくると、奴隷制度が廃止されて奴隷だった人が市民権を得て、普通の市民として労働に従事していく事になりました。

大土地所有者である貴族は、奴隷の代わりに没落農民をコロヌス、小作人として使うようになった。彼らは奴隷とは違い自由人であり、またアントニヌス勅令によりローマ市民権を有しており、財産を持つ権利あるいは子孫に財産を贈与する権利などを有していた。
コロナートゥス-wiki

小作農が没落していくようになると、領主の力が非常に強いものになって、次第に『小作農』と言える状態から『農民の奴隷』とも言える農奴という呼び方に変化を見せていくようになります。かなり自由の制限された状況でした。

日本における個人事業主の衰退

1999年から2009年までの僅か10年の間に個人事業主がどんどん廃業している事が見て取れます。その多くは、地方の食堂、小規模商店、そして自営業の農家などです。郊外に大型ショッピングセンターなどが出来たことによって、地域の商店に行く機会が少なくなって、小さな商店が次々と廃業していく事になりました。

このような傾向というのは、日本だけにとどまらず、世界的な傾向であると見られています。


中小企業庁のサイトより

バーチャル世界の無限性

オンライン世界というのは、無限にパソコンを拡張していく事ができます。それに対して、そのバーチャルを活用する世界の人口と言うのは有限です。そう考えると、かつての『土地を巡る争い』がインターネット上の世界でも起こってくる可能性があります。現実として、インターネット上でヤフーショッピングが出店料を無料化したのを見ても、土地を巡る競争が激しくなっている事が分かります。

無限性の中で、競争が激しさを増して、ソーシャルアプリを提供している企業の利益率の低下を招いていくのは間違いありません。Facebookにしても、ユーザーの伸びは既に止まっていて、ユーザーの滞在時間を伸ばすにも限界がきています。動画などを大量にアップロードされると利益率が低下するので、新しい広告形態を探したり、課金するようなシステムを増やしたりしていく必要があるでしょう。

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