インターネットで小額課金のシステムについて(実用性との結合)
ここ10年ぐらいのインターネットと言えば、無料で使うというのが当然のような流れになっていました。当初のホームページの公開というのは、趣味でやってる人がほとんどで、お金(マネタイズ)を無視して自分の発信したい情報を発信する程度のものでした。そこから2003年にGoogle Adsenseなどが出現する事によって、無料のウェブサイト(コンテンツ)が比較的簡単にマネタイズ出来るようになってきて、2007年頃になるとゲームの課金という形でモバイルを中心にして仮想通貨を購入するという形が増えてきました。日本では、携帯会社に登録した個人情報を通じて行えるので非常に簡単です。
コンテンツの小額課金について、少しだけまとめてみました。キーワードは、実用性との結合です。
ウェブサイトの小額課金の問題
ウェブサイトにおいて小額課金が難しいのは、先ずは自分のサイトで技術的に課金をするという部分においてセキュリティの問題など課金しないサイトに比べてコストが高くなるという問題点があります。クレジットカードを多数のサイトに登録する事は、カード情報の漏洩リスクを高める事でもあり、クレジットカードが小額課金にはあまり向いていないと言えます。そこで、クレジットカードを1ヶ所に絞って課金する「Paypal課金」「Yahoo!ウォレット課金」などがありますが、日本ではまだそれほど一般的に使われている手法ではありません。
日本の課金と言えば、その多くが携帯電話からの課金になっていて、携帯会社が課金を代行してくれるケースが多いです。例えば、AUかんたん決済というやつで、AUが決済を代行してくれるので、携帯電話の料金と一緒に支払えばいいですし、セキュリティとしてもクレジットカードを入力するのに比べると安全性が高くなっています。日本の携帯市場においてプリペイド携帯がほぼ皆無で、月額契約で携帯電話会社と契約するので、日本における課金と言えば携帯会社の課金が主流となっています。
オンラインゲーム通貨は換金できない
オンラインゲームのアイテムが無形資産にあたるかどうかという議論はずっと前からありました。オンラインゲームの通貨というものは、購入はできるのですが、売却する事はゲーム会社のルールなどで禁じられています。オンラインゲームの通貨(アイテム)を購入するのは、そのアイテムを購入するという仮想の体験やユーザー間の交流費用を買う行為であって、そのアイテム自体が価値を持つものではないとされています。つまり、いかにユーザーがアイテムに愛着を持とうと、ゲーム会社は「アイテムは保障しない」というスタンスをとっています
現実としてGreeやモバゲー、LINEなどの利益率が高い理由と言うのは、アイテムの換金を保障しなくていいからです。無限に作り出せるサーバー上の仮想アイテムを「売り切り」で販売するので、利益率が高くなるのは当然です。全く同じようにゲームでお金が動く宝くじであったり、パチンコなどの場合には、国の規制に応じて換金率(正確に言えば景品への交換)などが決められています。
オンラインゲームの換金市場
オンラインゲームの仮想通貨はゲーム会社によって換金できないという事にはなっていますが、現実的にはYahoo!オークションなどで換金が行われています。それはゲームに限った事ではなくて、例えば大量のフォロワーを抱えたツィッターのアカウントも売買されています。いわゆる「闇市場」なわけですけど、現実的に1回の取引で数万円-数十万円のお金が動いていて、人によっては1ヶ月で100万円以上も売り上げる人が現れています。こういったオンラインでゲームの無形資産を売却するというのは、法律的にはグレーゾーンとなっており、ゲーム会社としても裁判するなどの強攻策をとっていません。
また、RMT(リアルマネートレード)を専門とする業者もあるぐらいなので、グレーゾーンで商売をしている人は、日本国内においてもそこそこの数はいると考えられています。お隣の国の韓国においてはRMTを法的が法的に規制されています。業者が恐れているのは、RMTを厳しく取り締まる事によって、なんら関係のないユーザーまでゲームのイメージを悪くしてしまう事に繋がって、それがオンラインゲーム市場自体を縮小させてしまう事でしょう。
2007年頃に日本でも電通が宣伝を繰り返していた「セカンドライフ」は、仮想世界と現実世界の区別をなくそうというもので、実際にセカンドライフ上の通貨を換金する事が可能でした。ただし、セカンドライフ自体が流行せずに流通した通貨自体も少なかったので、換金どうのこうのが問題になる前にセカンドライフは事実上日本からいなくなりました。
自分が引退の売却は駄目か
スキーの好きな友達に聞いたら、スキー場などに昼頃に行くと、朝からスキーを滑っていて帰る人から「1日リフト券」の中古を安い価格で購入出来ることができたといいます。本来であれば、スキー場はこうした行為を禁止している訳ですけど、スキー場の1日リフト券は20歳の友達にはとても高くて、そういった方法でしか購入する事ができなかったという事なのです。半日の為に1日リフト券を購入した人は、途中で帰るので誰かに売ってしまえば、結果的に安く滑れた事になってお得です。
オンラインゲームでは、自分が育成したアイテムには、少なくとも自分の時間が反映されているのですが、その費やされた時間は、引退した瞬間に全く無駄なものになってしまうという空しさがあります。ゲームという場所で知らない人と交流、体験を買ってみたけど、実際には自分の生活は豊かになるどころか貧しくなってしまったし、それで自己資産は完全減少して1円たりとも増えていないという事に引退する時に気がつくのです。
Greeを引退するユーザーが「Greeで遊んで楽しい事は楽しかったけど、グリーの友達は誰か分からない人だったし、お金には換金できなかったし、単に時間を無駄したと感じる」という感想を持ってやめるようだったら駄目だという事です。ユーザーの一時的な体験として「楽しい」と感じるかもしれないですが、後から後悔させるような体験というのは長続きせず、リピーターも限定されてしまいます。新しいユーザーを取り込もうとしても、もう国内に新規ユーザーなどほとんどいな状況で、引退する人が多いだけです。
LINEのゲームが孤独を解消
今までは、ゲームと言えば、知らない人同士でやるものだったのですが、LINEゲームというのは知っている人同士でゲームの交流を楽しむことも出来ます。そうするとどういう事が発生するかと言えば、ゲームにお金を投じて遊んでいれば、とりあえず現実の友達とも繋がりが持てる可能性があり、それは現実の自分を豊かにする可能性があるという事です。例えば、任天堂のゲームを通じて家族が交流できたり、友達が交流するスタイルに良く似ています。知り合い同士でゲームをすれば、匿名でゲームをするよりも楽しくて安心という訳です。これならゲームを引退してもLINEで友達の繋がりを維持できるのでいいですね♪
簡単に言ってしまえば、ウェブコンテンツにしても、単に「面白い」「楽しい」というだけではなくて、人間と言うのは現実社会への実用性を求めて発展していくものだと思います。例えば、ミクシィは半匿名でありながら、知り合い同士で繋がって「オフカイ」などを開催するという面白さがありました。それが簡単に加入できるように設定が変更されて、スパムが多くなってほとんど完全な匿名になってしまった事によって、コミュニティが崩壊してFacebookの実名性、ほぼ完全匿名のTwitterに移行していきました。ミクシィは、大多数の中でいかに「実用性」を高めるかにフォーカスすべきだったのかもしれません。
LINEの場合には、無料通話と無料チャットという友達との交流の中心にある場所を押さえているのが何よりも強いと感じます。ゲームをやってお金をつぎ込んだけど、その分だけ友達と交流できたからいいかなと思わせる事ができるのです。
中国のオープンソースプラットフォーム
中国において注目しているのがU Center HomeというSNSモデル(中国語から日本語訳の部分を私がボランティア翻訳しました)です。このモデルは、オープンソースのSNSを誰でも簡単に作る事ができまして、そこにユーザーを集めて簡単にゲームをインストールする事ができます。そのゲームでユーザーが遊んでManyoubiという仮想通貨を購入すると、サイトを構築してユーザー課金を成功させた人に対して課金額のうち一定金額が配分されるという仕組みです。このU Center Homeプロジェクトは、中国でそこそこの成功をおさめていて、巨大なSNSプラットフォームとして稼動しているものもあります。
サーバーにインストールして多少のカスタマイズできる能力があれば、小額課金をManyoubiに任せてゲームからお金を稼げるというモデルとなっています。日本では、手島屋がミクシィを真似してオープンソースのSNSのOpenPNEを作りましたが、ゲームの課金まで発達させる事ができずに今ではほとんど使われなくなったオープンソースになっています。設計段階において、モジュール(プラグイン)に柔軟性を持たせておかないとプラットフォームとしてはすぐに陳腐化してしまうのです。
小額課金のまとめ
最初は「面白いだけ」で見られるコンテンツは、やがては「実用性」を求めて転換していくという事が分かりました。ウェブ世界においても、最初は面白いからという理由だけでコンテンツを公開していた人たちが、少しずつ広告を掲載したり、課金ビジネスを開始したりするようになっています。単におもしろいゲームを提供していくというだけでは、やがて市場全体が飽きてしまってグリーのように業績が悪化していく事になります。そこで、ゲーム会社は、更に現実社会とリンクさせた「実用性」を打ち出していく段階に入っていくのかもしれません。
また、今まで広告を使ってきたコンテンツビジネスを行っている会社に関しても、広告だけに依存せずに、実用性を高めた「日頃から使える情報」の提供にフォーカスしていく必要性がありそうです。最終的には、実社会を豊かにできる会社だけが生き残っていけると考えるからです。
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