ニコンと言えば、キャノンと並んで、世界の高級カメラ市場で存在感を示しています。そのニコンが苦境に立たされています。理由は、スマートフォンのカメラが高性能化して、コンパクトデジカメが全く売れなくなった事です。2011年11月には、社員1000人を削減するという大規模なリストラを行う事が発表されました。デジタルカメラなどを手掛ける映像事業で約350人、本社部門で約200人と発表されています。2017年3月も赤字の見通しです。
高級コンデジの発売中止
ニコンは、高級コンデジの発売中止を発表して、リストラを進める事が決定されました。スマートフォンのカメラが高画質化するのに伴って、コンデジの画質追及を行いましたが、一眼レフが小さくなっていく現状において、一眼レフとの区別が付きづらくなってきました。
先にスマートフォンの普及でコンパクトカメラが全く売れなくなりましたが、それに次いで高級コンデジでも発売しても売れ行きが鈍い状況が予想されて、発売を中止に追い込まれました。
日本の家電で唯一生き残るカメラ
日本のカメラは、世界的に評価が高くて、世界の家電で日本勢が唯一シェアが高い分野とさえ言われています。その他の家電については、ほとんど韓国・中国などにシェアを奪われてしまいました。しかし、ここに来てカメラすら厳しい状況になっている事が明らかになりました。
今年はニコンにとって創業100年の節目という事ですが、このまま市場規模が縮小していくと、ニコンの業績が危なくなってしまいます。利益が出せるうち(体力があるうち)に次の事業を探さなくてはいけません。ニコンでは、早期退職を募集したところ、2017年2月10日までに募集した早期退職で応募が殺到したそうで、社内では『この会社はもうダメだ』という雰囲気が流れているのでしょう。
得意のカメラ市場が縮小
カメラ市場が縮小したのは、スマートフォンの性能が向上した事によって、コンパクトデジタルカメラを保有する人が減少したからです。最近では、ほとんどのシーンがスマートフォンで撮影して十分な画質で撮影できるので、カメラを趣味にしているような人しかカメラを持ち歩かなくなりました。スマホカメラは、写真をインスタグラムなどのSNSにアップロードする時にも便利で、デジタルカメラより使い勝手がいいのです。
本来、ニコンのようなカメラ事業者は、インスタグラムのような写真アプリを手掛けて、経営を多角化させていかなければいけませんが、そもそも経営陣にインスタグラムを理解できる人がいるのか、いないのか、とにかくカメラの製造と、あとは医療用の精密機器などを手掛けるぐらいのもので、本格的にカメラユーザーの需要をとらえることに失敗していました。そして、多くの人の需要を取り込めなかった企業は、社会に必要とされなくなっていきます。