少子高齢化で労働者不足なのに賃金が上昇しない理由
日本において、労働者は不足しているとされています。特に不足が著しいのは、少子高齢化の影響による医療・介護です。労働者が不足しているにも関わらず、日本人の賃金はどんどん下落しています。正社員の数が減少して、派遣社員・アルバイトの数が急増しています。
日本の賃金が下落する背景には、国境をまたいでグローバル化していく企業の姿があり、
単純作業で低賃金となる
単純作業しか行えない人は、海外との競争が激しくて低賃金になっていきます。日本において、派遣社員・アルバイトの低賃金が問題になっていますが、基本的に派遣社員・アルバイトが行っているのは単純作業であり、高度作業とは呼べない作業を任される事になっています。以前であれば、派遣社員が担わなかった仕事であっても、国際競争の中でその多くが派遣社員が行うようになっています。
企業の正社員に求められている仕事は、単純作業ではなくて、派遣社員・アルバイトが行う事ができない高度な仕事になってきています。そして、高度な仕事というものを行うには、しっかりした教育と、仕事の訓練が必要になってきます。
大学の先生が低賃金になる
低賃金が求められているのは、一般の企業だけではありません。大学の講義がオンラインに置き換えられたり、民間の人が大学で教える授業を受け持つようになってくると、大学の講師が安い賃金で使われる事になります。既にその傾向があって、大学の講師が貧困で困っているという事が社会問題になってきています。1週間に数時間を教える大学の講師だけでは食べていけず、副業アルバイトをしている人も沢山います。
今後は、大学の講義を自宅のビデオで受ける形に変化していくので、大学の講師が失職するという事も起きるでしょう。現在においても、多くの大学において『雇い止め』が問題になってきています。大学院の修士課程、博士課程まで卒業して大学教員になっているにも関わらず、給料が低い上に雇い止めにもなるという身分の不安定さです。こうして大学の底辺にいる講師が厳しい状況になるという事は、それは同時に教授・準教授などの肩書がある人も厳しい状況に置かれていく事を意味しています。
自分で稼ぐ事の重要性
一時産業が中心で『土地からのみ富が生み出される』時代には、土地の保有がお金持ちの条件となっていました。それが工業化するに伴って、会社を母体とした株式保有と言う形態に変化してきた歴史があります。土地が富を生み出した時代には、地主と言われる人たちが小作農に土地を貸し付けていました。それは戦後の『農地改革』によって、小作農が自作農に独立していく事になりました。
江戸時代初期には、自分で畑を耕す自作農が多かったとされていますが、江戸時代後期から地主に成長したり、小作農に転落する人が出てきたというのです。一度、田畑を手放して小作農に転落すると、再び自作農になるのは大変な事でした。会社員は基本的に小作農に類する身分ではありますが、日本の大企業が世界的に豊かな状況にあった戦後は、正社員になっているだけでそれなりの暮らしができました。それが派遣社員・アルバイトという不安定な雇用形態になる事で、土地を保有しない小作農本来の姿が見えつつあります。
人口減少の中において、日本の新たなビジネスが創出される可能性は非常に低い状況で、自作農になるのは至難の業となっています。現代の自作農=自営業として独立してやっていけば、将来的に会社を大きくして地主となれる可能性も出てきます。
企業に対する労働供給の変化
現代の教育システムというのは、基本的に労働者になる為の基礎教育となってます。その証拠として、教員たちが大きな労働組合を形成しています。日本の高度経済成長というのは、農村部から都市部に対して労働供給が行われた人口移動によって経済発展を遂げたと言う事もできます。同じ事は、中国においても起こってきており、中国の都市部に人口が集中しています。
インターネットが使われる事になっていくと、労働供給が全く別のものに変化してきました。例えば、ユーチューブのサーバーの多くは、日本国内にありませんが、多くの日本人が毎日のようにユーチューブを見ています。インターネットのサービスの多くは、海外にサーバーがあります。そして、この海外からのサービス供給はは、日本のサービスを支える労働者の脅威になっています。日本国内で労働のサービス供給と消費が行われている時代ではなくなってしまいました。
資本を必要としない稼ぎ方
インターネットを通じて、資本を必要としない稼ぎ方を展開する事もできる時代になっています。資本が全く必要なかったとしても、自分が毎月のように生活するぐらいのお金は必要になり、実際に稼ぐ為には、この自分が毎月の生活をするお金の方が問題になったりします。そして、この『毎月自分が生活するお金』をインターネットで稼ぎだす事は、非常に難しいのです。
ユーチューバーなどは、資本をユーチューブから借りて自分たちの動画を人気にする事によって収入をあげるスタイルになっています。その労働形態としては非常に不安定で、人気となるユーチューバーも非常に少数ですが、ユーチューバーの人気は社会現象とも言える状況になってきています。
個人の収益資産が変化
ユーチューバーの中には、プロ野球選手の年俸以上である数億円も稼ぐプレーヤーも出現しています。従来は、テレビ局などが担ってきた娯楽番組は、ユーチューバーがアクセスを集める事によって、テレビ局よりも激安で担うようになってきました。また、それをサポートしているのは、日本資本ではなくてユーチューブという外国資本で、サーバーも多くが海外に存在しています。
従来のように企業の社員として報酬を得るやり方ではなくて、プロのプレーヤーとなって企業と契約して稼ぐやり方になってきています。しかも、誰でも非常に簡単にプレーヤーとなる事ができるので、多くの人がプレーに参加するようになっています。非常に多くの人がインターネットで動画を公開して稼いでいます。