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東芝に見るグローバル経済をコントロールできない日本企業の失敗!東芝の粉飾決算の深刻さ

  • 30 December 2015
  • のぶやん

グローバル経済を支配しているのは、間違いなくアメリカであり、中国も自国の13億人の人々を支配する事ができます。日本は、単なるアメリカの属国なので、日本国内1億2千万人の市場を支配する力があったとしても、世界を支配する力はありません。それは、東芝の原発推進が完全に失敗している事でも明らかになりました。東芝としては、「2029年度までの15年間で、新たに「64基」の原発建設を受注する」としていますが、この傾向というのは世界の潮流と逆行しており、米国ですら原発を積極的に推進しようとは思わなくなってきています。

原油価格の大幅下落

2015年には、原油価格が大幅に下落した事もあって、原発が更に不必要と言われるようになりました。実際に原発を稼働させるコストというのは、火力の数倍から10倍を超えるとまで言われるようになってきています。さらに大事故のリスクもあって、2011年福島原発事故の惨状を目のあたりにした国々は、原発のリスクを再認識して、原発を推進している国は現状でほとんどありません。

東芝は、2029までの15年間で64基の受注すると言い張っていますが、世界の潮流として確実に「脱原発」の方向で動いており、原発をこれから推進する東芝というのは、世界の中でも浮いていると言えるでしょう。その目標自体が世界の潮流を見ておらず、計画として成立していないと言えるでしょう。

日本国内における脱原発の流れ

日本国内においても、既に原発の再稼働だけでも相当の反発が生まれています。日本は、原発を既に全国各地に54基も保有しており、これ以上の原発を作るのは不要であるし、住民からの反発も強いと言えるでしょう。東日本大震災で福島原発が大事故を起こして、国内の原発が廃炉に向かうはずだったにも関わらず、東芝・三菱重工などが政府と癒着して原発を更に推進しようとしましたが、世界の潮流は確実に脱原発なのです。米国だって、1979年スリーマイル事故から原発の新規建設を停止しています。まあ、既に電力が余ってきたという事情はあるのでしょうけど。

日本国内においても、原油が過去にないほどに非常に安価で調達できるようになっており、円安であったとしても、原油調達コストというのは本当に安くなっています。航空会社も「燃料サーチャージ」というものを廃止するほどに安くなってきており、航空券がその分だけ安くなって海外旅行も行きやすくなりました。言い換えれば、現状の原油価格においては、原発を再稼働させる理由などどうやっても探しがたくなっており、それは電力会社の経営側から見ても同様の判断になるのです。電力会社から見ても、再稼働させるとコストが高くて反発も強い原発というのはお荷物になりつつあるという事です。

WH社買収の大失敗

東芝は、リーマンショックが起こる2006年に米ウエスチングハウス社を50億ドル(6000億円)ほどで買収していますが、この買収が東芝を最悪の状態に引きずり込んだとされています。リーマンショックの前の日本企業は、中国の好景気に支えられる形で業績が良い企業が多くて、東芝も家電などにおいてそこそこの利益を出せていた時期でもあります。その一方で、中国家電業界などから激しい追撃を受けた時期でもあり、日本の家電業界は将来が危ないという事が目に見えて明らかになった時期でもあります。

東芝がこうした状況において、もしWH社の買収を行っていなければ、家電業界、半導体の危機的状況の中でも、他社のようにリストラを行えば、何とか生き残りが図れたかもしれません。しかし、東芝はお金がない中で、無理をして米WH社を買うという経営判断を行って、その判断が大きく誤っていたうえに、更に2011年に福島第一原発の事故において、日本でスリーマイル以上の事故が起こってしまって、日本の原発は国内外からも全く信用されなくなりました。これは、運が悪かったという事ではなくて、買うべきではない負債企業を高額で買収して、その扱いに困っているうちにどうしようもなくなったという事です。

この買収を例えるならば、月収がどんどん下落して家計がピンチに陥りそうなサラリーマンの家庭が、バクチをして維持費が非常に高い値下がりがほぼ確実とみられる高級マンションを銀行から多額の借金をして高値で買い付けるようなもんでしょう。絶対に買うべきものではないのに、他に収入の手段がなくなって行き詰まりを見せた末の大バクチという事になります。もちろん、バクチが当たる事はなくて、東芝の場合には粉飾決算を繰り返すということになりました。粉飾決算は、資金繰りに困って、暴露されて行く事になります。

東芝の実力を課題に評価していた「のれん代」

のれん代(Goodwill (accounting))とは、Wikipadiaを見ると「In order to calculate goodwill, the fair market value of identifiable assets and liabilities(資産と負債) of the company acquired(取得した企業)is deducted(償却する) from the purchase price.」と書いてあり、簡単に言ってしまえば、企業を買収した後に再度企業価値を評価しなおすという事で、少しずつ償却をかけていなかくてはいけないとされています。簡単に行ってしまえば、購入した企業の償却をかけながら、本体企業の利益がそれに応じて増加していくはずだという考え方に基づいているのでしょう。もし、ここでその償却を行わないと、本体企業の利益や価値が増大した事になりながら、買った企業の価値も出すという二重で会計に計上してしまっている事になってしまいます。

東芝は、WH社を買収した後においても、2011年に
ランディス・ギア社を23億ドルで買収しており、WH社とランディス・ギア社ののれん代経常だけで、無形資産が数千億円、全体の無形資産だけで1兆円を超えているとされています。簡単に言ってしまえば、東芝は「利益はでないけど、資産は沢山保有しているように見せている会社」であり、この無形資産が無価値と判明してしまえば、会計上は容易に債務超過に陥ってしまうと考えられる会社なのです。何故ならば、これらの「無形資産を持つ」と東芝が言い張っている会社というのは、実際には売却が難しい会社だからです。

本来であれば、東芝が手放さなければいけない事業というのは、白物家電でも半導体でもなくて、最もお荷物の原発事業のはずなのです。その原発事業に何故か資源を集中するとして買収を繰り返して、更にそれらの企業の償却を行っていなかったという事であれば、会社の価値がどの程度であるか外部からは把握する事が難しくなっており、完全に投資家を騙していたと見るのが良いでしょう。

儲かる事業は売りたがらない

当たり前の事なのですけど、儲かっている事業を売りたがる会社というのはありません。特に経営者が「これから利益が見込めるだろう」と予想する事業について、売りたがる経営者というのは皆無であり、借金してでも事業を拡大していきたいと考えるのが普通でしょう。売却にかかる事業の大半が「今後は儲からない見込みが強い事業」であり、その事業を買収するのは、「相乗効果が生み出される事によって、儲かる事業に変化させられるから」という理由からです。しかし、原子力事業というものは、世界的に減少する市場であり、そこに相乗効果も何もあったものではありませんでした。むしろ、東芝が原発を1基も受注できない中で、買収したWH社が「無価値となっている状況」だったのです。

東芝がWH社を買収したのが2006年であり、それから既に10年近くの時間がたっています。2008年9月に起こったリーマンショックによって、東芝の経営状況は既に相当にヤバい状況にあった訳ですけど、買収した企業が利益をほとんど生み出さない(新規の原発が受注できない)中において、10年を経過して減価償却が順調に進んでいれば、「現在の企業価値はゼロに近い」というのが正確な数値でしょう。言い換えれば、東芝が計上している1兆円近い企業資産が無価値となり、東芝は事実上は自分では再建が困難である倒産状況にあると言えるでしょう。

投資家を裏切った会社を信用してはいけない

東芝は、メディアが報じるまでのれん代の減損を行わず、更に東証が指摘するまで開示すら行いませんでした。これは、投資家からお金を集めている上場企業としてはあってはならない行為であり、すぐに上場廃止にすべき企業でもあります。しかしながら、東芝の場合には、すぐに上場廃止にしていません。これは、投資家を裏切る行為を行ったにもかかわらず、東京証券取引所との癒着から上場廃止になっていないという非常に悪いケースです。こうした事が連続して起こっていると、東証自体が信頼性を失って、投資家から投資を受けられなくなってしまいます。

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