宮崎駿監督は、なぜ”後継者”を育てることができなかったのか?
宮崎駿監督が「人を育てるのが下手」だったのではなくて、最初からスタジオジブリ自体が「宮崎・高畑の作品を作る」ことを目的にしていたので、2人の作品作りが終わった時点で、その目的を終了して、スタジオジブリの制作部門自体が必要なくなったということでしょう。
最初から、宮崎駿監督は、クリエーターであって、経営者ではなかったということです。それは、良く考えれば当然のことだったと思います。宮崎駿監督は、驚異的な集客力をもって多くのスタッフを雇った、その功績だけで十分たる社会貢献をしているわけで、それ以上のことを求めるのは間違いに見えます。(多くの犠牲のもと?か知らないですが)優れた芸術が生み出されたことは間違いないからです。
高畑・宮崎のスタジオジブリ
スタジオジブリは、高畑、宮崎監督の作品を作り続けました。そして、その役割を終えた2014年にスタジオジブリが200人のスタッフを全員クビにして、制作部門を閉鎖しています。200人の常任スタッフを雇い続けるには、年間で数十億円の莫大な資金が必要となり、常に「ヒットする」映画制作を続けないといけません。下手をすれば、赤字でも映画製作しなくてはいけない状況になります。
2008年に募集された契約社員
2008年に募集された「契約社員」は、2009年4月から2年契約の契約社員を募集しました。それまでは、研修生という形で募集して、その後に正社員にするというものでしたが、正社員を雇うことができなくなって、結局は「契約社員」という形で募集されることになります。そして、2014年にスタジオジブリは、正社員を含めた政策部門のスタッフを全て解雇する形で制作部門を解散します。
スタジオジブリの使命
宮崎駿監督の最優先とするのは、『スタジオジブリで自分の作品を作る』ことであり、それのみに専念することです。そもそも、『自分の作品を作ることを目的にスタジオがある』のであり、他人を成長させる土壌を作るためにスタジオジブリを作っている訳ではありません。
成長する人は、どこにいても成長するし、成長できない人はどこにいても成長することができません。日本は、かつてのように高度経済成長している訳でもなく、新しい市場が生まれる訳でもありません。その中で、「成長することが難しくなっている」ことは紛れもない事実でしょう。チャンスを得るためには、自分から新しいチャレンジする姿勢が必要になってきています。
成熟した市場と勝負する
自分で成長していくのには、以前にも増して「膨大な時間」をつぎ込む必要がでてきています。インターネット初期に参入する、アニメ初期に参入するのと違って、既に成熟した市場と戦わないといけないからです。宮崎駿の作品と勝負できるだけの独自性を持たなければ、今の作品はヒットしないのです。高度な作品を求められている中で、その独自性を磨くのは、簡単なことではありません。
人に世界を見せるには、自分の世界を持っていないといけないんですけど、日本で若いうちに「経験」を積むことは、先進国としてリスクになってきてるのです。それよりも、大勢の人は「安定した暮らし」で十分だと思っているからです。
安い給料でも成長できればいい
スタジオジブリに入る人は、「安い給料でも成長するならいい」と思って入ってくるでしょう。しかし、実態としては、頭脳を完全に酷使される状況になり、自分自身でアニメーターとして想像力を活かすような訓練をすることができない現実があるでしょう。今の時代は、イラストが上手、下手よりもストーリーを組み立てたりする方が「高度技能」とされる時代(実際には過去でもそうだったかもしれないが)です。
そのため、イラストの上手下手を競うのではなくて、ストーリーが面白ければ、十分に商用に乗るような状況があります。進撃の巨人なんて、(一般的に見たら)イラストが上手には見えませんし、頭文字Dだってイラストが上手には見えませんが、素晴らしい作品として売れています。
独自の視点を磨いていくこと
人間が成長するためには、他の人をコピーすることよりも、独自の視点を磨いていく事の方が「大きな爆発力を生み出す」という結果になっていきます。それが「今の時代に合わせる」ということだからです。宮崎駿監督の世界観をコピーする事では、独自の視点を磨くことはできません。自分で旅をして、メモをして、自分の感覚で自分の視点を磨いていかないと、面白いストーリーにならないでしょう。それで修行をしたところで、単なる「宮崎駿の劣化版」にしかならない。
商業化に成功しても継続できない
スタジオジブリの場合には、商業化に成功したにも関わらず、属人化していたので継続できない問題が起こったという事です。別の意味で言えば、良く商業化に成功して、20年~30年も企業としての体を保ったとも言えるでしょう。それが宮崎、高田のなせる業だったと言えば、大成功だったと言えるでしょう。
新しい成長のスタイル
今の時代には、新しい成長のスタイルがある気がします。例えば、自分の作品をYoutubeにアップロードして稼いだりする方法です。最初から「長編アニメ」みたいな凄いものを作れなかったとしても、ショート動画で30秒ぐらいなら、一生懸命やれば自分1人でもチャレンジできることはあるかもしれない。そうした、市場とダイレクトにつながる『オープンチャレンジの時代』なっているのだと思います。
宮崎駿監督の年齢
37歳:未来少年コナン
38歳:カリオストロの城
43歳:風の谷のナウシカ
45歳:天空の城ラピュタ
47歳:となりのトトロ
48歳:魔女の宅急便
51歳:紅の豚
56歳:もののけ姫
60歳 :千と千尋の神隠し
63歳:ハウルの動く城
67歳:崖の上のポニョ
72歳:風立ちぬ
82歳:君たちはどう生きるか
宮崎監督が欲しい人材
宮崎駿監督の評価は、「人を育てる事ができなかった」というものです。鈴木プロデューサーは、「宮崎駿監督が欲しいのは、自分のコピーだった」と言っていて、周囲の評価はそんな感じで統一されているように見えます。