日本においては、低金利で借り入れを行う事ができて、円も高いので海外資産を積極的に購入する企業が増えています。その筆頭格となっているのがソフトバンクで、次々と海外買収を行っています。ソフトバンクは、アリババ株を担保にして、借り入れによる買収を行っています。
借り入れによる買収の危険性は、過去に三菱地所がロックフェラーセンターを買収した失敗に現れています。アメリカ側の三菱アドバイザーのビリー・バージ氏が1500億円の借金で買うのは危険が大きいと警告しても、どうしても買いたくて自信に満ち溢れた三菱地所を止める事ができませんでした。
バブル期に三菱地所が失敗
バブル期の日本では、アメリカの不動産がもの凄く割安に見えていました。三菱地所にマンハッタンの中心に建っている14棟のロックフェラーセンターを2200億円で購入しました。三菱地所の役員らは、ニューヨーク郊外のロックフェラー家が所有する別荘などでもてなしを受けました。
当時は、1985年のプラザ合意で円高になり、アメリカの不動産が購入されるようになりました。ロックフェラー側は、1600億円ほどの評価額で考えていましたが、三菱地所は89年10月に2200億円でロックフェラーセンターの購入を決定しました。バブル崩壊の直前の出来事です。
高値で買い取ったツケ
三菱地所が最高値の時に買い取ったロックフェラーセンタービルは、そのビルを育てて売却したロックフェラー家に多額の利益をもたらすことになります。その一方で、三菱地所は、買い取った後に全く利益が出ない事に気が付きます。慢性的に金利支払いを上回る状況になりました。
どんなに良い不動産でも、利益を生み出さないものはお荷物になってしまいます。日本では、不動産が値上がりする前提で買い取られますが、アメリカで不動産の値上がりが前提とはなりません。三菱地所は、1995年に1500億円の損失を出してロックフェラーセンター12棟を放棄しました。
東京丸の内の再開発
三菱地所は、買収・撤退をから不動産開発に切り替えて、東京都の丸の内を中心に不動産の開発を行っています。丸の内の多くの土地を保有している三菱地所は、丸の内の価格を上昇させる事で、自社の時価総額・価値を上げていこうと考えていたようです。
三菱地所の計画によって、東京・丸の内の整備が進められ、丸ビル・新丸ビルが建設されたり、東京駅の改修工事が行われたり、東京ステーションホテルが開設されるなどしています。東京駅前の再開発によって、東京駅前の地価の底上げと、商業ビル・ホテルで新しい収益源を狙っています。
東京のみが元気な日本
日本で元気があるのは、人口流入が続いている東京と一部の大都市のみとなっています。地価が上昇しない地方都市などは、財閥系の企業は見向きもしません。大手財閥系の企業が関心を持つのは、築地市場の移転のような確実に儲かる再開発事業のみとなっています。
財閥系の企業などは、東京オリンピックなどの名目で東京都からカネを引き出して再開発を目指していますが、国民にメリットが少ないので前途多難です。この元気が良い東京でさえ、2020年代に人口減少に転じるとされています。世界で最大の都市である東京経済圏ですが、その行く先は不透明になってきています。