医療系サイトとして検索エンジンで上位を独占していた『WELQ』がインターネットで大炎上して、NHKまでニュースで取り上げる騒ぎになりました。そのWELQを運営するDeNAが外注先として使っていたサービスが上場企業であるクラウドワークスだったという事実が発覚しています。しかも、DeNAとして発注していた訳ではなくて、自社の名前を伏せたうえで、誰が発注者か分からないようにして発注をかけていたというのだから呆れます。
クラウドワークスが稼げない件
クラウドワークスと言えば、、2016年2月にクラウドワークス社が公開した「2016年9月期 第1四半期決算説明資料」によると、2015年12月末時点のユーザー数は79.5万人いるのに対して、20万円以上稼いでいるのが僅か111人と公表されました。80万人のユーザーがいるとしていながら、まともに稼げているのが111人しかいないという事実にインターネットでは『これは酷い』という声で溢れていました。更に『稼げているのは30~40代の専門職ユーザーが中心』という事で、稼いでいる人も働き世代のパワフルな技術力ある人しか稼げていない実態が更にこのビジネスの悲惨さを物語っていました。
平均で月収20万円以上を達成したユーザーというのは、僅か111人だけという事で、これを割合にすると全ユーザーの約0.014%ほどしかいない計算になります。この状況を言いかえれば、ほとんど稼げる人がいなかったといっても良いでしょう。月収20万円超えのワーカを増やす為に『プロクラウドワーカー』制度を設立したとしていますが、『そういう問題じゃないだろ』と思わず突っ込みたくなるわけです。20万円を超えるというのは、クラウドワークスで生活できる人が100人程度しかいないという事で、それは働き手としては全く夢も希望もない世界なわけです。単なる安く低賃金で働く労働者になる訳です。
これはクラウドワークス自身が公開した資料であり、会社の本質を最も良く示す資料として提示している訳です。クラウドワークスはこんなに魅力的ですよ!と会社が言ってる資料が全く魅力的に見えず、むしろブラックに映ってしまうというのは、かなり深刻な事態でもあります。こんな状況ではとても働く気にはなれないと思います。
クラウドワークスは手数料を取るべきではない
このような状況においては、クラウドワークスは、『労働者から手数料を取らずに労働者にその分のお金を還元する』ぐらいの事をしないと、良い労働者が集められるはずがありません。そもそも、優秀な人がこんな低賃金で働けるわけがないでしょうし、『空いた時間に少し稼ぎたい』というほど簡単に稼げる仕事の単価であれば、ライターのように激安のブラック案件しかないのがオチでしょう。もともと少ない報酬から更にクラウドワークスが手数料を取るというのだから、労働者を奴隷と勘違いしているとしか思えないブラックサイトに見えてくる訳です。
クラウドワークスは、お金を支払う企業側の事情を考える事は必要でしょうけど、同時に働く側の事情をもっと真剣に考えないと、誰も働き手がいない状況になるでしょう。メールアドレスのユーザー登録を済ませたとしても、実際に稼働している人が多くなかったり、仕事をするのが1回、2回程度だったりして、実際にはほとんど稼働しない、もしくは稼がないユーザーが多いのでは、サービスを維持する事すら難しくなってしまうでしょう。先ずは、多くのユーザーに利用して貰う事を想定して、ユーザーにとって便利なサービスであるべきですね。
赤字になっているクラウドワークス
クラウドワークスは、現状においてかなりの赤字を出している事が公表されています。営業利益が10.5億円で、営業赤字が8.5億円なので『相当に大きな赤字』と言えるでしょう。こういう仲介ビジネスというのは、本当に少人数で行えば良いものにして、社員を10人ぐらいに絞り込んで、利益を出す方法を模索する方が手っ取り早い気がします。利益がそれほど大きくないにも関わらず、従業員数が100人を超えているというのは、インターネット企業としては無理しすぎだと思います。
稼働のユーザーが拡大したとしても、利益を急速に伸ばすのが難しいどころか、競合他社もいる事で独占市場でもない中で、収益をどんどん拡大していくのは容易ではないでしょう。クラウドワークスでは、『個の力を最大限に発揮して、社会の発展と個人の幸せ』としていますけど、このような報酬体系において『人がワクワクしながら働ける未来』を創造するのはとても無理というものでしょう。従業員数を大幅にカットして、その分だけワーカーの報酬を増やすような体系を整えないと難しいと思います。
伸びているクラウドワーク利用
実際に上記から数か月後の2016年11月に公表された『2016年9月期通期 決算』を見てみると、クラウドワークスの契約総額はそれなりに伸びている事が分かります。契約総額が伸びて、2016年の最終四半期営業収益が3億2800万円をあげたという事です。しかし、人件費だけで最終四半期に2億7千万円ほど使っている状況で、最終四半期4億8600万円の支出があり、四半期だけで1億円以上の大赤字の状況に変わりありません。年間だと5億円もの赤字が出てしまっています。
このような赤字を解消する為には、クラウドワークスの契約総額が伸びて、特に宣伝費用などをかけなくても売り上げが上がるようにしていく必要があります。しかしながら、大量に記事発注を行っていたとみられるDeNAのWELQとその他のサイトの記事発注が停止される見通しである事は、クラウドワークスから見ても、かなり痛手になる事は間違いないでしょう。
クラウド外注の競争環境が激化
最近、ライティングの外注は、クラウドワークスであったり、ランサーズ以外の企業も数多く参入してくる市場になりました。ライターさえ確保できれば、誰でも容易にできる仲介ビジネスだからです。例えば、インターネットサーバーをやっているヘテムルでも記事の外注が出来るようになっていますし、記事を外注しようと思えば、1記事0.5円ほどで簡単に外注できる環境が整っています。
私が記事を外注する場合には、直接インターネットで募集して履歴書を提出してくれる人にクラウドワークスやランサーズよりは、もう少し多めの報酬で働いて頂いています。クラウドワークスやランサーズで低価格で記事を書いて貰ったとしても、誰が書いたか分からないような文章で、どうせ手直しが必要になるので二度手間になるからです。更にコピペ&リライトの問題なども発生しやすいのでどうしようもありません。
DeNAが出資するエニタイムズ
DeNAは、いろいろな出資を行っていますが、ランサーズやクラウドワークスと類似する企業に分類されているエニタイムズという企業に5000万円の出資を行っています。2013年5月に設立された企業で、既に3年以上を経過していますが、今ひとつ成果が出ていません。もたもたしているうちに、クラウドワークスが2016年11月15日にスキル売買のC2Cビジネスに参入すると発表(名前がWow!meという最悪の名前)したので、成果が出ていないうちからエニタイムズに非常に驚異の競合が現れたという事になります。クラウドワークスとしては、今までより売り上げを伸ばすには、スキル売買の分野まで手を広げないと難しいと判断したとみられています。
ちなみにビジネスの知恵袋さんの知恵を引用しますと、『エニタイムズのビジネスモデルでは、単価5000円前後で手数料収入が15%なので、1件成立につき750円の収入になります。この単価だと、1000万円稼ぐには1万件以上のマッチング成立しないといけません。スケールさせられるかが大きな鍵になります。』と書かれてありますので、かなりのスケール規模の受注を受けないと、社員1人の給料を支払う事さえ難しいという事になります。フリーマーケットやホテルのように物を扱うビジネスならば、かなりの個数をさばいて手数料を手にする可能性が見えてきますが、人を扱うビジネスでは、かなり単価を上げないと厳しいと言えるでしょう。1日100件の案件をまわしたとして、750円×100件=75000円×30日=250万円でようやく会社として回るといったところでしょうか。
人が動くと交通費などが発生する
エニタイムズのビジネスについては、家事を7500円で受けたという女性が紹介されていて、『好きな事をやっているので楽しんでできる』と紹介されています。実例を見ると、ランサーズやクラウドワークスと違って、労働者の側から提案して、特技をアピールする場となっているのは、確かにブラックになりづらい構造はあると感じます。ただ、問題点となるのは、交通費などをすべて個人が負担する事になるので、意外と高くなるという点です。私が得意分野で引き受けるのであれば、1回動いて2万円以下だととても無理だと思います。例えば、パソコンを初心者に気軽に教えるという作業で、2000円とか、3000円などという価格はあり得ない価格で、実際に教えるとなると2万円とか3万円という価格になってくるでしょう。
エニタイムズ側としては、いかに単価を高めるかは収益性に直結するので、専門的な人材をいかに確保するかに集中していく必要がありそうです。また、専門的でなかったとしても、1ヶ月契約が可能で単価を高くするなど、1回当たりの成約単価を高めなければ、事業として成立させるのは難しい気がします。